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2023年11月7日 20:00 ~ 2023年11月18日20:00
※各小説のタイトルはリンクとなっております。文豪コロシアムからの退会や作者自身による作品の非公開などでリンク先のページが無い場合がありますので、予めご了承ください(リンク切れは順次対応いたします)
総括
第1回文豪コロシアムにご参加いただいた皆様、ご投票いただいた皆様、本当にありがとうございます。
当初構想より開発が遅れたことにより、リリース後に何度か障害を出し、そのいくつかは本コロシアムのコンセプトに関わるようなものであったことで、皆様にご迷惑をおかけいたしました。運営自体は初回ということで慣れないことがあるにせよ、運営母体がシステム開発会社であることを考えるとシステムの障害についてはお恥ずかしい限りであり、深く反省するところであります。
さて、第1回の開催ということもあり、この1stステージでは全31作品+運営からの出稿1作品の32作品で競われることになりました。
過去、色々な企画があったと思いますが、1on1で作品同士が競うというのは類をみない方式となっており、2回戦に進んだ後、どういった形になっていくか非常に楽しみです。
すでに16作品が2ndステージに進んでおります。
文豪コロシアムの特徴である1vs1での戦いという規定は、強豪同士の潰し合いも発生してしまいます。敗退した作品の中でも秀逸だと感じた作品もございましたので、総括としてピックアップさせていただきます。
第7会場の「シャボン玉飛んだ。傘まで飛んだ。雨降る中で、こわれて消えた。」は内容も深く2ndステージに進んだ他の作品と比較しても全く遜色がありませんでした。第7会場は投票総数が15票、1票差で「虹の棲む街、灰色と四角。」が勝ち上がったという1stステージで一番の激選区となりました。
第10会場の「二センチメートルの愛 」は運営側の評価と比べ思った以上に得票数に差が出て敗退した作品です。こちら、対戦相手となった「耳がいいだけの彼は、彷徨えるオーボエを掬わない」と比較しても十分に勝ち上がるに値する作品だと感じておりましたが、作品間の僅差が大差を産んだのかもしれません。マッチゲームの難しさになります。
なお、個別作品の講評については「第1話としての構成」「記述の必然性」といった点を中心に述べさせていただきました。一方でストーリーそのものや、ジャンル、作風といった点は嗜好性が強いものであるため、あまり深くは触れないようにしております。Web小説ならではのお作法ではありませんが、空行を入れるという点についてもいくつか記述させていただきましたが、こちらは可読性に比重を置いた場合の考え方の一つですので、作風次第というところではあります。以上のような内容について今後のブラッシュアップの一助になれば幸いです。
2ndステージも始っております。
引き続き文豪コロシアムをお楽しみいただければ幸いです。
2023年11月26日
文豪コロシアム 運営事務局
総票数 26 勝者得票率 73.08%
本編の中心となるであろう「同業者」への紹介に関わるエピソードが中心の構成でしたが、一つのエピソードの中に回想シーンを挟むことや、第1話の範囲では三島探偵事務所が登場する必然性が第1話の中で見えなかったため、全体の構成をイメージさせるには少し弱い展開のように感じました。
物語としての展開を意識するならば、「早くに両親を亡くし」を冒頭部にもってきた上で、三島探偵事務所におけるエピソードは第1話の構成としては大胆に端折ってしまった方が、読者の没入速度は増すかと思います。各話に読者への「引き」が必要かについては賛否が分かれるところではありますが、第2話へ結びつけるために読者へ提供する期待感というものを意識することで、物語の世界観が拡がって見えてくるのだと思います。
ゴーストゴースト・ゴーストライター 2ndステージ進出
書き出しから読者を世界に引き込むことに成功している作品。
三人称主人公視点で物語は語られるが、地の文の含め語り口調にはキャラクターとしての魅力が溢れており、一方でヒロインとなるゴーストについても、今後、魅力が全面的に押し出されるだろうという期待が持てる描写となっている。
物語としてはゴーストとゴーストライターの二人を主軸に様々なゴーストが登場し、作中小説を紡ぎながら事件を解決するコメディタッチなミステリーとなるのだろうと第1話から感じた。幽霊がヒロインであることから物語の最後は悲しい別れになるのか、あるいは、ハッピーエンドになるのか、読者をやきもきさせる危うさを軸に持つ物語は強いのかもしれない。
総票数 21 勝者得票率 57.14%
ノリノリの主人公の様子が冒頭から飛び込んできます。
一人称で記述する場合、主人公のキャラクタを前面に押し出す必要がありますので、このキャラクタの語り口調が読者の共感を得られるかが作品評価の大きな分かれ目になるかと思いました。
読者を選ぶ作品というのは、大きな読者層を捨てる一方で、強い特色を持つことになりますので、物語の運びに成功すると強力なファンを掴むことになりますので、意図して行う場合は、非常に効果的です(意図しない場合は読者数が伸びない理由に悩むことになります)
寮長の登場シーンについては、台詞が先行したために、3人の女性が登場したことが少し把握しずらい表現となっております。ここは主人公の台詞は1つに絞り「ヨシ、じゃありません!」「うるっさい!」「脳筋牝馬」の3人の台詞を並べた上で、3人が入ってきたことの明示が先にあった方が良いかと思いました。また、このシーンにおいて3人が登場する必然性という点も考慮する価値があるかと思います。主人公のキャラ付けを出すだけであれば、いずれか1人の登場として集約した方が冒頭部としてすっきりしたかもしれません。
あるいは、あえて誰も登場させずに、ストーリーの進行を優先し、次のシーンへ進めてしまう展開でも成立したのでは無いかと思いました。
回春魔術師ポコアの愉快な媚薬店 2ndステージ進出
第1話ながら心暖まるエピソードと、次話以降へつながるエピソードの2本立て。贅沢な構成です。
タイトルも内容も、本サイトのR18はNGという規定に抵触するのではとヒヤヒヤしながら読み進めましたが、特段問題もなく、暖かいヒューマンドラマという展開でした。
人間模様を描く際に性の話は切っても切れないものだと思いますが、R18に抵触せずに性を中心とした話題を盛り込んだ前半部には高い構成力を感じました。
この設定で様々なエピソードを描く構成が作りだせるのでは無いかと感心しております。一方で贅沢な2エピソードを盛り込んだことで、蛇足になってしまうような読後感があります。こちらは大会の規定を意識して、最初のエピソードの完成度が高いが故に、短編としての成立を阻む意図があるのではと推察いたしましたが、是非とも大会完了後は話の構成を分離していただいた方が良いのではないかと感じました。
※ 現在、文豪コロシアムではエピソードの順番入れ替えなどには対応しておりませんが、年内にこちらは対応をする予定でおります。
総票数 14 勝者得票率 78.57%
頼むから魔法にかけられろ! 2ndステージ進出
第1話で示している方向性が少し不明瞭な気がしました。
冒頭の二人の魔王の話と勇者との戦いのシーンがあることで、第1話で一番描きたかったであろう主人公とヒロインの駆け引きの始まりへ向かうエピソードが、全体的に平坦な印象を受けてしまいました。
例えば、二人の魔王については、「現在、魔界は魔王の影響で筋肉至上主義が蔓延っている」程度のワンセンテンスに凝縮してしまうことができたのでは内でしょうか。こういった社会背景を説明する部分については、もう少し後ろのエピソードでも良い気がします。
一方で第1話の転換点となる「看板」の文字は、Xなどで流行した「○○しないと出られない部屋」であり、知らない読者はともかく、このムーブメントを知っている読者に対しては惹き付ける魅力が満載のキーワードとなっています。
一番強いインパクトを与え得る部分ですので、この言葉をエピソード全体の主軸に置き、時系列ではなく、読者を引き込むためだけの第1話という構成を取ると作品の魅力が、もっとストレートに伝わるのではないかと感じました。
【四方世界へ】異世界一周してきたバカだけど何か質問ある?【いざ行かん】
正直なところ、小説としての評価が難しい作品となっております。
いわゆる掲示板回を第1話に持ってきているため、結果敵に会話劇だけになっており、2話以降を読ませる構成かというと、かなり悪手ではないかと感じました。
読み手が受け止める「理解」を意識するということは、とても重要です。この辺りを読者に媚びを売るということと同義に捉える方もいますが、全く別の観点になるかと思います。
本講評では、Web小説として悪手だと言える部分となる部分を3点ほど説明します。
1点目として掲示板回を冒頭に持ってきたことについて述べます。
第1話は物語全体の印象を作ります。このため、第1話から掲示板回ですと第2話以降も同じ流れのように感じます。スタートにおいて方向を決める、すなわち読者の嗜好に合うという材料で第2話目以降に誘引することはとても重要です。
2点目となります。主人公はスレ主だと思いますが、結果的にほぼ出てきません。これでは登場人物がどんなキャラクターなのかが読者に伝わりません。第1話で物語を動かさない限り、膨大なコンテンツが流れるWeb小説では「次」を読む動機を読者に伝えられません。
最後ですが、あらすじでも、「スレを立てる」とありますが、この物語のテーマがスレを立てることなのか、やっとスレを立てることが出来た異世界からの帰還の物語なのかが、第1話段階で読者に伝えるだけの情報量がありませんでした。全てを提示する必要はありませんが、読者へ提示する情報量のコントロールという点は意識して記述する方が良いかと思います。
総票数 14 勝者得票率 57.14%
勿体無いというのが第1話を読んだ直後の印象でした。
物語の全体構成や長さがどのようになっているかにもよりますが、最初に年表全てを出すのが適さない作品だと思います。
年表後に物語が始まり、すぐに物語の根幹となる大きな情報が飛び込んできます。ストーリーだけで充分な情報量を読者に提供できているように感じました。だからこそ、冒頭部分で年表を通して読者に背景を伝える必要はなく、むしろそれなりの長さがある年表が読者への押し付けになる可能性があります。
プロット次第にはなってしまいますが、年表は物語全体を通したギミックとして用いると面白いかもしれません。例えば第1話では、「西暦2054年 オズマン合衆国大統領は国境の封鎖を宣言。難民の国外退去を定めた法案が可決」だけを冒頭で提供し、それ以降の年表は各エピソードの切り替えごとに進行させていき、最終的には何らかの伏線になるような形ですと、読者は同じ物語で複数回、旨みを味わえる気がしました。
拝啓、頭蓋骨の分厚い君へ 2ndステージ進出
物語の美しさを作る一文というものがあります。
この作品では第1話に現れているように感じました。
「……なんか、年食ったな。俺」
女優の死から主人公の口で紡がれたこの言葉。
雨の中という情景も相まって、この物語の世界の物悲しい美しさが端的に表現されています。
そしてラストの一文のまるで誤魔化すような欠伸という行為により「美しい世界」から「現実」への回帰。詩のような短編とも言える構成はまだプロローグであり、第2話へ続く物語となっていくのです。
年代やその人自身の社会的背景によっては、理解が難しい作品となるかもしれませんが、とても美しい文章という印象を強く受けた作品でした。
総票数 17 勝者得票率 76.47%
ウツロウ水槽頭 2ndステージ進出
あらすじから意味不明な印象を読者に放り込んでくるインパクトの強い題材を扱う作品でした。
そして第1話を読み進めると唖然とします。
カフカの「変身」のような主人公だけが変わってしまうことによる騒動と悲哀なのかと思いきや、主人公にとっては社会全体が水槽頭になるという奇抜な展開。
個性が実は個性じゃなく水槽に満たされた情報でしかないという比喩なのかとも感じましたが、第1話の謎の人物の登場と、水槽になっていない恋人の登場で、これが主観の物語なのか客観の物語なのかの混乱が生じます。
この混乱こそがこの作品の魅力であり、作者から読者へ「お前さんの場合、この物語の理解はどうなるんだい?」という投げかけのようにも感じました。
第2話以降が非常に楽しみな作品です。
花びらの魔法と分解の魔法は愛しあう ~蛮族に嫁ぐのは嫌という姉の身代わりになりました~
ドアマットヒロインが、姉の身代わりで嫁ぐことによって物語が動き出すという最近の王道の一つとも言える展開の作品です。
王道であるがため物語に埋め込む材料が重要になるのですが、第1話の範囲では世界観や物語の背景といった点に踏み込む描写がありませんでした。
文豪コロシアムという特性を考えた場合、第1話にこの物語の魅力となる主軸部分を組み込みことで、王道という内側から大きく逸脱できるかどうかが伝わります。
少しだけでもスパイスになるような材料を組み込んであった方が良かったのではないかと感じました。
総票数 15 勝者得票率 86.67%
小説というのはとても贅沢な物で、作者が作り出した世界のうち、読者が魅力を感じるようなエッセンスの上澄みだけを提供するものになります。このため、物語を構成する際に、その展開は必要なのか、そのシーンは必要なのか、時系列による説明は必要なのかといったことに注意する必要があります。
ついつい全てを説明したくなるのは作者の常ですが、脳内にある情報を全て読者に提供しても魅力と速度感が落ちるだけになります。
その観点から本作を捉えた場合、第1話の構成要素は以下に絞られます
・謎の主人公が街へ訪れる
・主人公はなぜか無償での人助けを生業としている
・魔物が多くでる原因である洞窟にあるブレスレットを、なぜか街まで持ってくる依頼を受ける
・巨大な狼と戦う
この4点を全て丁寧に描いているため、第1話は時系列を追うだけの話になってしまい、そこに物語性がありません。主人公は巻き込まれた訳ではなく、自分自身で騒動に飛び込んでいるため、行動の動機についても読者が受ける印象が薄いものになっています(必然性がない)
物語の主軸は何かを意識し、読者へ伝えたい事は何かという事に的を絞り、提供する情報を調整してみた方が良いように感じました。
水棲の契約 2ndステージ進出
冒頭の少年がレントなのか、あるいは別の人(例えばアーヴィン)なのかの情報はまだ第1話では開示されていません(あらすじには記載されていますので、解ってしまいますが)。
物語の進行は遅いのですが、情景描写の筆力が高く、まるでそこで息づく人々の土の香りに包まれた生活というのがダイレクトに伝わってきて、文章の世界に読者を無条件に引き込んでくれます。
平坦だったレントの人生がアーヴィンとの出会いによって変化していくであろう予感が、そのまま主人公が行動原理として自然に説明されていくであろうという点が、きちんと伝わってくるため、読者は安心して読み進められます。
登場人物の名はカタカナで定義されていましたが、雰囲気は西洋的というより十二国記のような神話よりの中華要素がある世界に感じました。いずれにしても次話以降が楽しみだと感じられる作品でした。
総票数 15 勝者得票率 53.33%
虹の棲む街、灰色と四角。 2ndステージ進出
冒頭の『「きっと世界は」丸いのよ、』という部分が非常に映像的な記述だと感じました。地の文と台詞の使い分けにより効果的に表現してある部分ですね。
続く主人公の台詞の部分も「おれは……」おれは、答えられない。と台詞と地の文で語る心情という対比を作っており、この段落の完成度を非常に高めているように思います。
場面転換後の「おれは」は明らかに違う音として表現されており、いよいよ物語が始ったことを読者は知る事になります。そして蚊人間に関するエピソード。そして続けざまに物語からの解決すべき課題が提起されています。
最初から最後まで、まるで映画を観ているような色彩と音を感じさせる文章描写に、次話以降の期待を強くもってしまう内容でした。
シャボン玉飛んだ。傘まで飛んだ。雨降る中で、こわれて消えた。
うわぁ、というのが第一声です。ラスト一文で鳥肌が立ちました。
主人公の回想を含めて妹を失った悔恨がストレートに表現され、主人公の危うさも端々に表れている中、唐突に現れた青とピンクの2本の傘を差し、くるくると回転させる少年。主人公が吹き付けるシャボン玉……
ホラーでもありサスペンスでもあるようなラストに、唐突に訪れる現実が崩壊していくかのような展開。妹を失い、虚ろとなっていた主人公の現実が3年の時を経て音を立てて崩れ落ちる。そんな印象を受けました。
物語の引きとしても、構成としても第1話は完璧とも言える展開ではないでしょうか。
総票数 16 勝者得票率 75.00%
俺とカオルさんの日々 2ndステージ進出
この手の作品の王道は……と一瞬、作者の方を呼び出してお説教したくなるラストの展開。Boy meets Girl ではなく、Boy meets macho でしたか。そうですか。
幽霊物としてはとてもオーソドックスであり、何らかの理由があり独り暮らしを始める主人公が訳あり物件に住み始めた初日に出会ってしまう。
とても安心感のある展開だと思いました。
これが単純な出会いであったとするなら、第1話としてはインパクトが弱いものになったと思いますが、ラストのラストでビキニパンツ(ブーメランパンツ)のマッチョ登場には笑いました。筋肉は全てを打ち消します。
出落ちにも近いカオルさんの登場ですが、タイトルに「日々」とあるため、緩やかな日常が続くのでしょうかね。とても楽しみな作品です。
第1話として位置する話なのか、短編的に終わってしまうのかが悩ましい内容になっていました。これは文豪コロシアムという1話ごとに公開を進める作品としては不向きだったかもしれませんね。
文字数の圧力は京極夏彦先生の作品を彷彿させるような不気味でかつ「みっしり」としていました。アナログの時計を「Q」として表現するなど、とてもお洒落な雰囲気であり、時計から不思議の国アリスも連想させる、現実と空想の境目がなくなった世界観は好きな人には刺さりそうです。
総票数 13 勝者得票率 69.23%
死にたいあの子を守る俺 2ndステージ進出
とても面白い題材を扱う作品ですね。
一方で三点ほど展開および構成で勿体ないな……と感じました。
屋上でのゾンビのシーンが唐突すぎるように感じました。多分、ゾンビが先に存在している状況に違和感を覚えるのだと思います。ゾンビに囲まれている少女になんて事情も知らない状況で近づきませんよね。この部分は少し工夫があった方が良いように感じました。
また、月給50万なのにゾンビだけで50万という点が、冒頭部に「月に何回自殺を計るのだろうか」という懸念を主人公が挙げていることもあって、辻褄という点で引っかかってしまいました。
最後に50万の給与にも掛かる話ではありますが、最後の「その後も何度か仕事をこなし……」以降は第1話としては蛇足のような印象を受けました。ここはもう少しすっきりと終わらせても充分に作品の魅力が伝わると思います。
時系列が追いにくい構成と感じました。
文中には2023/4/1 、2020/8/31, 2020/8/16, 2020/8/31と文中に3種、合計4回の日付が表現されています。実際の時間を表すのは2020/8/16と2020/8/31の2つ。2020/8/31のシーンの回想として2020/8/16が差し込まれます。
この展開と内容であれば、冒頭部分は第2話以降に回し、2020年8月31日からの記述からとするか、あるいは思い切り割り切って、「下半身がない」からスタートしても充分に面白さは伝わったのではないかと思いました。
ヒーローを殺してしまうヒーローというのは題材としてとても面白いと思います。
読者としては時系列が遡るような展開は思った作者が想っている以上にストレスを感じますので、特に第1話の段階ではできるだけ単純に表現することを意識した方が良いとされることが多いようです。
総票数 13 勝者得票率 84.62%
あー、なるほど……という溜息とともに流れる言葉が第1話を読み終わった感想。
これは凄いなぁ。えぐいというか、寒気がするというか。
本人に自覚が無い……から自覚を持った後に物語がどう動くのか。タイトルの回収はどういうところでなされるのかといったところに興味が尽きないですね。
物語の構成としても、こういう話であれば、こうあるべきという作りがストレートに成されていて好感が持てます。
一方で第1話だけの勝負となると最終行だけの勝負となりそうな作品のため、投票にどう影響したのかという点はとても気になりますね。
耳がいいだけの彼は、彷徨えるオーボエを掬わない 2ndステージ進出
青春物とミステリーは相性がいい。
これは色々な作品で実践出来ているところですね。
ただ多くは主人公が語り部で探偵役がパートナーとなることが多いのですが、この作品では主人公が探偵役で語り部であるという面白い切り口。栗本薫先生の「ぼくら」シリーズみたいな感じになるのでしょうか。
ミステリー物はどうしてもスタートダッシュが難しいのだが、うまい展開と、ラストの一文、「英美里の気を変えるのには十分すぎるほどに」に、どこかしら無双感があり、読者の期待値を上げているように感じました。
総票数 10 勝者得票率 80.00%
泣きっ面に青
女装を始めた動機付けが素晴らしい。
セクシャルマイノリティとは違う理由があることが主人公の「弱さ」をうまく表現しているように感じました。そしてそれがきっとスパイスとなり物語を大きく動かすのでしょう。
一方で文章の煮詰まり方はWeb小説としては気になりました。
実は縦書きにするとそうでも無いのですが、横書きで隙間のない文章というのは読む人へ圧迫感を与えます。ストーリー的なイメージに対してプラスになるケースもマイナスになるケースもありますので、絶対ではありませんが、今回のようなストーリーの場合は文章に空間を与えても良いのではないかとは感じました。
例えばですが、最初の「はじめて女装をしたのは中学二年生の夏」の後に改行+空行があると文章のインパクトも強くなり、可読性も増します。
Webならではのテクニックではあるので、構成や物語の本質では無いのですが、そういった工夫も読者のためとして一考の余地はあるかと思います。当然、常に必要という訳ではなく、作風として文章が詰まっていた方が良い場合もありますので、単純ではないのですが、本作については空行があった方が良いかなと感じました。
空を翔る道 2ndステージ進出
1行目のインパクトが強いですね。
社会人同士の恋愛模様というのが綺麗に描かれていくんだろうなという印象が、第1話からでもヒシヒシと伝わってきます。
若洲ゴルフリンクスの先の橋は、どれを見に行くんでしょうね。行ったことがある場所なので、個人的にも興味をそそられます。
少し心配になるのは、先輩が口説いていた女性と二人で出かけてしまうというのは、わりと男社会でも嫌われる動きなので、スジは通したのかな……とボンヤリと思ってしまいました。男も嫉妬深いですしね。この辺りも物語のスパイスになっていくのでしょうか。
Web小説としては空行を少し挟んだ方が良いかも知れませんが、地の文の語り口調が軽妙なため、そこまでは気にならないで読み進められました。
総票数 17 勝者得票率 58.82%
第三者の語り部がまるで観察しているような切り口進める地の文。三人称ではなく二人称表現に該当するのでしょうか。そんな風に読み進めていたら、最後の一文で吹き出しました。
まさか、本当に観察していたとは……
作品の構成や煮詰まった文字は、この作品に関して言えば芸風とでも言うべき一言で片付けるべきですね。改行も空行もいりません。この形はこの形でとても完成度が高いと思います。
特に物語も進まず、ただ男が起きてコーヒーを飲んで二度寝した。ただそれだけ。ただそれだけなのですが、最後の一文が入ったことによって、まったく違う物語の扉が開きました。
第2話を読まずにはいられない。そんな印象を強く受けました。
起きられないモーニングコール、眠れない夜カフェ。 2ndステージ進出
あるのだろうなと思って検索したら、すぐにヒットしました。棺桶ベッド。主人公は棺桶ではなく棺桶ベッドを買うべきだったのでは無いかと最初に考えてしまいました。
物語は棺桶でやっと安眠できるようになった主人公が、ある日、酔い潰れて目が覚めたら本職(多分)のベッドで眠っていたという展開なんでしょうね。
題材としては面白いなと思いつつも、もう少し物語を動かした方が良かったかもしれません。例えば、すぐに同胞じゃないと気が付くのではなく、もう少し勘違いの時間を長く取ってすれ違いの妙を出してみたりすると面白そうです(ラブコメだったらという話になりますが)
あっさりと、がっかりさせるより、「ちょっと待って。私、本職じゃないんだけっど」くらいまで進めて、やっとおかしな会話をしていたことに気が付く二人といった方が物語の味付けになったのではないかなと思いました。
総票数 15 勝者得票率 53.33%
物語の進行上、時系列で描く必要がある場合と、そうじゃない場合があります。
この判断は読者に提供する情報の必然性という点で判断するのですが、本作品の場合、主人公が最初の死に至るまでの記述は無い方が物語の展開として膨らませやすかったのではないかと思いました。
第1話の展開だけで判断していますが、たとえば最初はゾンビスタート、「もう一度……魔力充填ッ」「うっ、ウガ……アアアアあれ?」みたいない感じで正気に戻るような導入でも物語としてします。この場合、その前段の件は現時点では必然性の無い部分となります。勿論、長編の場合は構成上、必要だという場合はありますが、その場合でも第1話に持ってくる必然性というのは、より厳密に考えて行く方が、読者の没入感という点で効果的だと考えております。
花火が枯れた世界で僕らは 2ndステージ進出
火遊びは危険ですが、子供にとってはとても魅力的に映るものです。
花火が禁止された世界というのは、そんな子供の原始的な欲求を法律で縛ってしまうものであり、この主人公以外にも隠れて花火を楽しむ子供は多そうですね。
高校生になり、法を破るという禁を犯した主人公達が花火職人を目指して今後どのような変化をしていくのか、そしてそれが世界大戦に繋がるという壮大な物語にとても期待を持ってしまいます。
総票数 11 勝者得票率 81.82%
「すぐにシーンに戻らないといけないのに……」という台詞の前にフィアは「見つけたというのに!!」と同じ音で終わる台詞を使っています。このため、どこか小さな子供が駄々をこねているような印象を受けてしまいました。
また、リンダやスズナが転移魔法を使えるようになった、転移魔法しか使えない人は役立たずという表現から、転移魔法自体の希少性が第1話時点では感じられませんでした。
フィア自身、まずすべきは転移魔法を持っている人を探すことなんじゃないのかという疑問をもってしまいますので、この辺り、少し表現を変えるなどの検討をした方が良いかと思います。
物語の展開でa→b→cと事象が動く場合、そうするしかなかった、そうすることが自然だったと読者に認識させるのはとても重要だと思います。
例えば、「諦めるわけにはいかない。誰か! 転移持ちは知らないか」みたいなフィアが酒場で人を探しているという表現など、最後まで諦めることができない忠義が滲みでるんじゃないでしょうか。
ハロウィンミッドナイト 2ndステージ進出
主人公の年齢はおいくつなのでしょうか。
登場人物の年齢が最初うまく把握できずに少し混乱しました。
君島からの電話が物語の核心にあるような位置付けながら、前後の文章とバランスが悪く、インパクトが薄いと感じました。
順番としては、「浜田の来店」→「君島からの電話」→「茜里の来店」→「浜田の来店(君島の電話を言いそびれる)」
また文章の改行、空行の使い方が統一されていないため、どこでシーンが切れているかが伝わりにくくなっています。例えば、同じ場所とはいえシーンが転換した「今日はいつもと違う空気が流れていた」の前には1行、空行を挟んだ方が読み手の情報把握が容易くなるのでは無いでしょうか。
また、その手前、「ビニール袋を片手に去っていった。」の次の文は構成上、別段落とする必要があります。
読者に提供する情報の塊という点を意識するのは書き手としてとても大切なことですので、ご一考いただければと思います。
総票数 11 勝者得票率 72.73%
転校生は少尉殿
運営参加作品のため、講評無しとします。
ペチュニア・ヴィオラセラ 〜天才公爵令嬢は没落した元貴族の準国民との結婚をあきらめない〜 2ndステージ進出
ウルグアイの白花にブラジルの赤紫の花を交配して出来たペチュニア・ヴィオラセラ。現在のペチュニアの元とばった種類のようです。タイトルに込められた意味がどこかで明かされるのでしょうか。とても楽しみです。
準国民とはなんぞや? その情報が提示される前で第1話が終わっています。物語としてはアニーが身分の垣根を力尽くで乗り越えていく物語となりそうですね。
文章の構成としては、まだ子供であるアニーの心情が良く描かれており、そこに庭の描写があることで、非常に映像的な印象を受けました。
まだ箱庭の中にいる少女がヘインズとの出会いを通して成長していく。そんな予感をさせる第1話だと感じました。
総票数 13 勝者得票率 84.62%
不条理物なのかSFなのかが読み取れない第1話でした。
しかし、こういった物語は第1話で情報を出し切ってしまう訳にはいかないので、仕方ありません。一方で、文豪コロシアム向きの作品かといえば、なかなか評価は難しいかもしれないですね。
こういった作品自体、需要が無いのかと言えば、こういった作風が好きな読者もそれなりにいます。小説だと、すぐには思いつきませんでしたが、映画ですと有名なところではバニラ・スカイあたりでしょうか。あるいはSFに寄りますがトータル・リコールなんかも同種と言えるかもしれません。
どこまでが日常で、誰が正常なのか。深いテーマだと思いました。
寛永御前ダンジョン 2ndステージ進出
あらすじからしておかしいですね。
何ですか、家光の側近がダンジョン配信というのは。
こういったぶっとんだ作品、とても惹かれてしまいます。
そして作品はキッチリと時代小説。お堅い時代小説、時代小説……と文章が続いていたはずでしたが、最後の最後で「ダンジョン配信ですわ~~」の一言で台無しに。
凄いですね、この展開。
次話以降、地の文をどう取り扱うのでしょうか。
ちなみに本作とは時代が違いますが、5代綱吉時代の生類憐れみの令が出たら、ダンジョン配信はどうなってしまうのでしょうね。
いずれにせよ次話がとても楽しみな作品だと思いました。