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ジャンルとデビュー
さて次にどのジャンルが自分に合っているのか。
まず僕が出版している作品だが、ミステリーや恋愛、スポーツものと多種多様。その多種多様さは何を隠そう自身の迷走ぶりを表しているもので、今となってもどんなジャンルが自分に合っているのか分からないのが本心である。それに作品のジャンルだけでなく、小説を発表するメディアやレーベルにも文学、純文学、ライトノベル、チャットノベル、ノベルゲームetc……と様々なものがありどれが自分に合っているのかを探すのは困難だ。
天職ならぬ天ジャンルを見つけるための手段として、とにかく『書いてみる』ということが大切だ。そして書いた小説を何かに投稿してみる。例えば出版社主催の公募や小説投稿サイトだったり。そこで一定の評価がもらえれば自信にもつながるはずだ。
そんな僕が小説家としてデビューすることが出来たのは戦略があったからだ。(戦略というと言い過ぎではあるがここではカッコよく戦略と呼ばせてもらう)
それは数打ちゃ当たる戦略だった。小説を沢山書いて量産するということではなく、小説投稿サイトを数多く利用して公募に応募しまくるという事だった。
形態、大小問わずあらゆる小説投稿サイトに登録し、小説を投稿し始めたがそれでも中々上手くいくことはなく、かろうじて優秀作品に選ばれる等、受賞には届かないものばかりだった。
ここまで来てようやく自分の経験不足を感じることになる。ここまで書いてきた小説は、どれも漫画作品や映画などに影響を受け書いてきた作品だった。
例をあげると少年漫画から着想を得たバトル風小説だったり、トレーディングカードゲームや異世界転生系のライトノベル、上げれば数多くあり、そのどれもが物語の道中で挫折して未完となったままメモアプリに今も眠り続けている。
これらは所謂外形的情報から出来た作品だった。内面的、つまりは自身の体験から着想を得て生まれた作品は全く無かった。
明らかに自分自身の体験等が足りていないと感じた僕が目につけたのは恋愛というジャンル。老若男女問わず誰にでも伝わりやすく共感を得られるのは恋愛だと感じた。その証拠に恋愛系の作品は世の中でヒットする傾向にあったし、何より携帯小説の多くは恋愛系の要素を含んでいることが事実として存在した。
しかし僕には残念ながら常日頃から連絡を取れるような異性はいない。そんな僕が始めたのはチャットアプリだった。無料でダウンロード出来て匿名で色々な人とチャットできるのが利点で、それを始めた時にタイミングよく出会った投稿サイトがトークメーカーだ。
キャラクターの会話に特化した投稿サイトで、地の文を書くのが苦手だった僕にとってちょうど良かった。
キャラクター同士の対話によって物語が進んでいく為、非常に読みやすく、活字離れが進んでいる若者にも伝わりやすい形態に魅力を感じたのだ。
目指したのは万人受けしやすい「恋愛」と「病気」を主軸に置いた作品。今までこの手の作品は数え切れない程産み出されてはヒットを連発していた。数多くあるヒット作に違ったアクセントを加える必要があり、僕が加えたのは「チャット」だった。会話メインのトークメーカーには短文の二者間の掛け合いで構成されるチャットは上手くマッチしていた。
チャットアプリの経験を活かしながら、なるべくキャラクターに説明させすぎないようテンポよく物語が進んでいくように書き進めていった。
そして「恋愛」×「病気」に「チャット」を掛け合わせて出来たのが「色とりどりの世界~ひとつ屋根の下、遠い逢瀬~」だ。
当時トークメーカーでは出版社が常時公募している賞があり、金賞、銀賞、銅賞のいずれかを受賞すると電子書籍を出版できるという特典があった。そこで銅賞を勝ち取り小説家デビューをしたのである。
迷走しながらデビューをしたジャンルは文学でもライノベルでもなく、チャットノベルであり恋愛だったのだ。
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